戦場のピアニスト
2003年3月14日「…仕事は?」
「…ピアニストです。ピアニストでした」
「そうか。では一曲何か弾いてくれないか。」
…ピアノ…
「来いよ。」
シュピルマンの目の前には一台のピアノがあった。
長かった。
6年前、ワルシャワは祖国ポーランドがドイツに敗戦し、ユダヤ人を絶滅させめ目論みが始まった。
住む場所と財産を奪われゲットーに追いやられ
次々と幼い子どもや年寄りが兵士達に殴り殺されたり飢え死んだり
未だ出会えぬ家族を必死に捜す人を見たり
逆らえず言われるがまま踊らされ
隣の一家全員が武装親衛隊(SS)達に撃ち殺される様を見てきた
けどこの頃はまだ良かった
なんとか家族全員、レジスタンスの計らいで仕事が出来たし、
自分の唯一の心の支えだったピアノが弾けた。
しかし、ゲットー縮小に伴い、生き残った人々も強制収容所に送られていった。
父も 母も 姉弟も 仲間も ピアノも
「自分」を「自分」と裏付けてくれるモノが何もかもなくなっていった
ワルシャワに留まった。強制労働に追従した。
しかしピアニストの自分に力仕事はやはり無理だった。
勿論そんな自分を見捨てていたわけじゃなかった
現場で自分達家族に仕事をくれたレジスタンスの男
彼は自分をゲットーから逃がしてくれた
ワルシャワの放送局でピアノの演奏を仕事としていた時の同僚夫婦
レジスタンスの男 ワルシャワ制圧後の弾圧時に恋わしたポーランド人の女性とその夫
彼らは自分にパンとポテトと一時の自由をくれた
けど結局誰もいなくなった
弾圧に耐えかね蜂起した勇敢な人々
シュピルマンは一度は同僚と
二度目はピアノのある潜伏先からずっとその光景を見ていた
一度目はゲットーに立て籠もった市民らがドイツ兵に蜂起した
ワルシャワ蜂起だ これを契機に解放運動は裏で盛んとなった
二度目は東部前線から搬送されてくる重傷兵の為の病院
レジスタンスは武装蜂起 病院を襲撃した
だが所詮軍隊と市民の集まりではその差は歴然だった
機関銃撃 戦車砲 蜂起は終わった。そして自分も瀕死の思いで逃げ出した
ピアノを弾く事は出来なかった
もしユダヤ人である事がドイツ兵、そうでなくても隣人に知れたら…
病院にも潜伏した
食べるものを必死に探し ボウフラの沸いたバケツの水をすすり
かれこれ何日経っただろう
外の様子を見た
撃ち殺され焼き出された死体を山積みにして焼き尽くす
そして火炎放射器を背負った兵が来た
建物の中へと火を放つ
残党狩りだ
逃げなきゃ
…
何日経っただろう
またゲットーの敷地に戻っていた
もう誰もいなかった。崩れた瓦礫の山だけが残っている
食べるものはないか…
…缶詰だ。…ドイツ兵が来た。屋根裏に潜んだ。
夜が来た ドイツ兵はいないようだ。缶詰を食べよう…開けるモノは
暖炉に来た。ここなら適当なモノがあるだろう
なかなか空かない 食わないと死ぬ
…あっ、落としてしまっ…
…
…お前、何をしている?
…
辛かった 苦しかった 涙も何度も流した
いっそ死んだ方が楽だったかも知れない
あの日 ショパンの「夜想曲」を弾いていた
指が自然に動く 何かを取り戻すように
生きるために
…
これで終わりだろう こんな思いは…
…
一ヶ月後だったろうか
ドイツ将校が別れの挨拶に屋根裏へと来た
この建物はドイツ軍の司令室になっていた
数日分の食料を受け取った 言葉はなかったがもう会うことは無いと直感した
「この砲撃は何ですか?」
「ソ連軍が迫っているんだ。もう数日頑張ればやっと自由の身だな」
「このご恩を…どう言ったらいいのか…」泣き出した
「…そうだ、これをやる。少しは寒さがましになるかもしれん」
ドイツ将校のトレードマークとも言えるオーバーコートを、シュピルマンは着た
「ありがとう けどあなたは? 寒くないのか」
笑って将校は答えた
「もっとあたたかいものが俺にはあるのさ」
名前も知らない ドイツ将校は去っていった
数日後ソ連軍により街は解放された
彼の戦いは終わった 6年もの長き日を経て…
-------------------------------------------
感想というかネタバレというか、(男三人で)戦場のピアニストを見てきた日記です
自分はプラモデルを作ってる関係上、当時のドイツ軍の書かれ方が少し気になったり
あまりに主人公のシュピルマンの潜伏期間の絵が長く感じたりと思っていましたが
見終えた感想は…
最初に放送局で弾いていた夜想曲
途中で何度か流れてきた夜想曲
そしてドイツ将校「ヴィルム」に言われ弾いた夜想曲
生きていたからこそ感じた憎しみ 怒り 哀しみ 喜び
そんなのを感じたのかな…と自分では思っております
これ読んで興味が湧いたら、誰か見に行ってみてね。きっと何か心に残ると思いますから。
-戦場のピアニスト 日本語版公式サイト-
http://www.pianist-movie.jp/pianist/index.html
「…ピアニストです。ピアニストでした」
「そうか。では一曲何か弾いてくれないか。」
…ピアノ…
「来いよ。」
シュピルマンの目の前には一台のピアノがあった。
長かった。
6年前、ワルシャワは祖国ポーランドがドイツに敗戦し、ユダヤ人を絶滅させめ目論みが始まった。
住む場所と財産を奪われゲットーに追いやられ
次々と幼い子どもや年寄りが兵士達に殴り殺されたり飢え死んだり
未だ出会えぬ家族を必死に捜す人を見たり
逆らえず言われるがまま踊らされ
隣の一家全員が武装親衛隊(SS)達に撃ち殺される様を見てきた
けどこの頃はまだ良かった
なんとか家族全員、レジスタンスの計らいで仕事が出来たし、
自分の唯一の心の支えだったピアノが弾けた。
しかし、ゲットー縮小に伴い、生き残った人々も強制収容所に送られていった。
父も 母も 姉弟も 仲間も ピアノも
「自分」を「自分」と裏付けてくれるモノが何もかもなくなっていった
ワルシャワに留まった。強制労働に追従した。
しかしピアニストの自分に力仕事はやはり無理だった。
勿論そんな自分を見捨てていたわけじゃなかった
現場で自分達家族に仕事をくれたレジスタンスの男
彼は自分をゲットーから逃がしてくれた
ワルシャワの放送局でピアノの演奏を仕事としていた時の同僚夫婦
レジスタンスの男 ワルシャワ制圧後の弾圧時に恋わしたポーランド人の女性とその夫
彼らは自分にパンとポテトと一時の自由をくれた
けど結局誰もいなくなった
弾圧に耐えかね蜂起した勇敢な人々
シュピルマンは一度は同僚と
二度目はピアノのある潜伏先からずっとその光景を見ていた
一度目はゲットーに立て籠もった市民らがドイツ兵に蜂起した
ワルシャワ蜂起だ これを契機に解放運動は裏で盛んとなった
二度目は東部前線から搬送されてくる重傷兵の為の病院
レジスタンスは武装蜂起 病院を襲撃した
だが所詮軍隊と市民の集まりではその差は歴然だった
機関銃撃 戦車砲 蜂起は終わった。そして自分も瀕死の思いで逃げ出した
ピアノを弾く事は出来なかった
もしユダヤ人である事がドイツ兵、そうでなくても隣人に知れたら…
病院にも潜伏した
食べるものを必死に探し ボウフラの沸いたバケツの水をすすり
かれこれ何日経っただろう
外の様子を見た
撃ち殺され焼き出された死体を山積みにして焼き尽くす
そして火炎放射器を背負った兵が来た
建物の中へと火を放つ
残党狩りだ
逃げなきゃ
…
何日経っただろう
またゲットーの敷地に戻っていた
もう誰もいなかった。崩れた瓦礫の山だけが残っている
食べるものはないか…
…缶詰だ。…ドイツ兵が来た。屋根裏に潜んだ。
夜が来た ドイツ兵はいないようだ。缶詰を食べよう…開けるモノは
暖炉に来た。ここなら適当なモノがあるだろう
なかなか空かない 食わないと死ぬ
…あっ、落としてしまっ…
…
…お前、何をしている?
…
辛かった 苦しかった 涙も何度も流した
いっそ死んだ方が楽だったかも知れない
あの日 ショパンの「夜想曲」を弾いていた
指が自然に動く 何かを取り戻すように
生きるために
…
これで終わりだろう こんな思いは…
…
一ヶ月後だったろうか
ドイツ将校が別れの挨拶に屋根裏へと来た
この建物はドイツ軍の司令室になっていた
数日分の食料を受け取った 言葉はなかったがもう会うことは無いと直感した
「この砲撃は何ですか?」
「ソ連軍が迫っているんだ。もう数日頑張ればやっと自由の身だな」
「このご恩を…どう言ったらいいのか…」泣き出した
「…そうだ、これをやる。少しは寒さがましになるかもしれん」
ドイツ将校のトレードマークとも言えるオーバーコートを、シュピルマンは着た
「ありがとう けどあなたは? 寒くないのか」
笑って将校は答えた
「もっとあたたかいものが俺にはあるのさ」
名前も知らない ドイツ将校は去っていった
数日後ソ連軍により街は解放された
彼の戦いは終わった 6年もの長き日を経て…
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感想というかネタバレというか、(男三人で)戦場のピアニストを見てきた日記です
自分はプラモデルを作ってる関係上、当時のドイツ軍の書かれ方が少し気になったり
あまりに主人公のシュピルマンの潜伏期間の絵が長く感じたりと思っていましたが
見終えた感想は…
最初に放送局で弾いていた夜想曲
途中で何度か流れてきた夜想曲
そしてドイツ将校「ヴィルム」に言われ弾いた夜想曲
生きていたからこそ感じた憎しみ 怒り 哀しみ 喜び
そんなのを感じたのかな…と自分では思っております
これ読んで興味が湧いたら、誰か見に行ってみてね。きっと何か心に残ると思いますから。
-戦場のピアニスト 日本語版公式サイト-
http://www.pianist-movie.jp/pianist/index.html
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